【初級編】熱力学の関係式を証明します

熱力学の関係式を証明する問題を解説

このページでは比較的簡単な熱力学における関係式の証明問題を解説します。

熱力学の関係式を証明するほとんどの問題は別ページで紹介した「4つの方針」に従うと簡単に証明することができます。

このページでは「4つの方針に則って」次の6問を証明します。

問題1

$\Bigl(\frac{\partial{T}}{\partial{P}}\Bigl)_S=\frac{TV\beta}{C_P}$を示せ。ただし、$\beta$は膨張率$\beta=\frac{1}{V}\Bigl(\frac{\partial{V}}{\partial{T}}\Bigl)_P$である。

問題2

$\Bigl(\frac{\partial{T}}{\partial{V}}\Bigl)_S=-\frac{T}{C_V}\Bigl(\frac{\partial{P}}{\partial{T}}\Bigl)_V$を示せ。

問題3

$T\text{d}S=C_V\text{d}T+T\Bigl(\frac{\partial{P}}{\partial{T}}\Bigl)_V\text{d}V$を示せ。

問題4

断熱可逆過程において$\text{d}T=\frac{TV\beta}{C_P}\text{d}P$を示せ。(ただし、$\beta$は膨張率$\beta=\frac{1}{V}\Bigl(\frac{\partial{V}}{\partial{T}}\Bigl)_P$)

問題5

$\Bigl(\frac{\partial{H}}{\partial{P}}\Bigl)_T=-T^2\Bigl[\frac{\partial}{\partial{T}}\Bigl(\frac{V}{T}\Bigl)\Bigl]_P$を示せ。

問題6

$\mu_\text{J}=\frac{T\Bigl(\frac{\partial{V}}{\partial{T}}\Bigl)_P-V}{C_P}$を示せ。ただし、$\mu_\text{J}$はジュールトムソン係数$\mu_\text{J}=\Bigl(\frac{\partial{T}}{\partial{P}}\Bigl)_H$である。

目次

問題1

問題

$\Bigl(\frac{\partial{T}}{\partial{P}}\Bigl)_S=\frac{TV\beta}{C_P}$を示せ。ただし、$\beta$は膨張率$\beta=\frac{1}{V}\Bigl(\frac{\partial{V}}{\partial{T}}\Bigl)_P$である。

まずは1問目です。

この問題は、右辺の式へ$\beta$と$C_P$の定義式を代入することが一歩目です。

回答はこちら
簡単な熱力学問題1

問題2

問題

$\Bigl(\frac{\partial{T}}{\partial{V}}\Bigl)_S=-\frac{T}{C_V}\Bigl(\frac{\partial{P}}{\partial{T}}\Bigl)_V$を示せ。

次に2問目です。

この問題も1問目とほとんど同じようにして解くことができます。

解答はこちら
簡単な熱力学問題2

問題3

問題

$T\text{d}S=C_V\text{d}T+T\Bigl(\frac{\partial{P}}{\partial{T}}\Bigl)_V\text{d}V$を示せ。

3問目はエントロピー$S$を温度$T$と体積$V$の関数として表してみるという問題です。

この式を証明できれば、気体の熱容量と状態方程式を利用することでエントロピーの変化を計算することができるようになります。

解答はこちら
簡単な熱力学問題3

問題4

問題

断熱可逆過程において$\text{d}T=\frac{TV\beta}{C_P}\text{d}P$を示せ。(ただし、$\beta$は膨張率$\beta=\frac{1}{V}\Bigl(\frac{\partial{V}}{\partial{T}}\Bigl)_P$)

4問目はピストンによる断熱圧縮などの際に内部気体が何度温度上昇するかを教えてくれる式です。

理想気体の場合、$PV^{\frac{5}{3}}=\text{const}$が得られます。

解答はこちら
簡単な熱力学問題4

問題5

問題

$\Bigl(\frac{\partial{H}}{\partial{P}}\Bigl)_T=-T^2\Bigl[\frac{\partial}{\partial{T}}\Bigl(\frac{V}{T}\Bigl)\Bigl]_P$を示せ。

第4問はエンタルピー$H$の圧力$P$依存性を示す関係式です。理想気体$PV=nRT$の場合、$\Bigl(\frac{\partial{H}}{\partial{P}}\Bigl)_T=0$になりますが、ファンデルワールス気体の場合、$\Bigl(\frac{\partial{H}}{\partial{P}}\Bigl)_T\ne0$です。

解答はこちら
簡単な熱力学問題5

問題6

問題

$\mu_\text{J}=\frac{T\Bigl(\frac{\partial{V}}{\partial{T}}\Bigl)_P-V}{C_P}$を示せ。ただし、$\mu_\text{J}$はジュールトムソン係数$\mu_\text{J}=\Bigl(\frac{\partial{T}}{\partial{P}}\Bigl)_H$である。

最後はジュール・トムソン係数$\mu_\text{J}$に関する問題です。

取り扱いが難しいエンタルピー$H$を一定させた偏微分$\Bigl(\frac{\partial{T}}{\partial{P}}\Bigl)_H$を取り扱いしやすい$\Bigl(\frac{\partial{V}}{\partial{T}}\Bigl)_P$の式に変更することができます。

解答はこちら
簡単な熱力学問題6
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