私は自作した蒸留計算プログラム「COLUMN.f」を持っていますが、正しい計算結果を出力しているかが気になっていました。
そこで、無料の化学工学シミュレーターCOCO/ChemSepを利用して、「自作プログラムが正しい結果を出しているか確かめよう。」というのがこのページの目的です。
合わせて、ブラックボックス化しがちなソフトウェアも、結局は「足し算、掛け算の積み重ね」をしているだけであることを知ってもらえればと思います。
COCO/ChemSepとは
多くの化学企業ではプロセスの設計やシミュレーションを行う際、ASPENやHYSYSなどのソフトウェアが使われます。これらのソフトウェアは定常計算だけではなくダイナミック計算ができたり、熱交換機の種類が豊富に用意されており、シミュレーターとしての完成度は非常に高いです。

ソフトウェアの使い方が分からない、収束しないといったトラブル時でも問い合わせるとアドバイスをもらえます
しかし、これらのソフトウェア(ASPENなど)は有償です。それも、個人ではとても契約する気など、まず起きない金額です。
COCO/ChemSepは「無料で化学工学シミュレーションをしたい」という希望を叶えるもので、優良ソフトウェアよりも選べる機器は少ないですが、「自宅で」「無料で」「簡単に」化学工学シミュレーションができるという夢のようなソフトウェアです。
自作プログラム vs COCO/ChemSep
【目的】自作プログラムの正しさを確認したい
改めて、このページの目的です。私は自作した蒸留計算プログラム「COLUMN.f」を持っていますが、正しい計算結果を出力しているかが気になっていました。
そこで、無料の化学工学シミュレーターCOCO/ChemSepを利用して、「自作プログラムが正しい結果を出しているか確かめよう。」というのがこのページの目的です。

計算条件
「自作プログラムの正しさを確認する」ということで4成分の蒸留計算を行いました。

成分 | MeOH/EtOH/H2O/Acetone |
FEED組成(mol比) | 0.2/0.3/0.1/0.4 |
蒸留段数 | 21 |
FEED段 | 13 |
FEED流量(mol/hr) | 10.0 |
蒸留塔上部の流出量(mol/hr) | 1.5 |
還流比 | 2.0 |
自作プログラムとCOCO/ChemSepでは可能な限り同じ条件で計算を行っていますが、特にエンタルピーのパラメータで差異が出ている点はご了承願います。
自作プログラムとCOCO/ChemSepの物性パラメータについて
自作プログラム | COCO/ChemSep | 備考 | |
蒸気圧 | Antoine | Antoine | ChemSepのアントワン係数は不明でした |
活量モデル | Willson | Willson | 自作とChemSepのWillson係数は同じです |
エンタルピー | 潜熱分のみ考慮 | ideal | 自作では蒸発熱を利用して潜熱分のみを考慮しています |

【結果】ほとんど同じ結果が出ました
早速結論ですが、自作プログラムとCOCO/ChemSepからは、ほとんど同じ結果が得られました。


組成、温度の差が概ね10%以下なので、ここでは「ほとんど同じ」とさせて下さい
組成において10%程度の違いが生まれた原因としては、エンタルピーについて自作プログラムとCOCO/ChemSepで異なるモデルを利用していることが主要因と考えています。
誤差が生まれたとはいえ、中で何が行われているかわからないソフトウェアと手作り感あふれる自作プログラムが「ほとんど同じ」結果を出したことは一定驚くべきことではないでしょうか?

結局、ソフトウェアの中でも単純な足し算、掛け算で蒸留計算するしかないんだろうね。

まとめ
化学工学のシミュレーターは便利なのですが、もちろん弊害もあります。それは「化学工学計算のブラックボックス化」です。
ASPENはもちろん、COCO/ChemSepでも蒸留塔の段数や還流比を「ポチポチ」と入力すると、きれいなグラフを出してくれるのですが、どのようにしてそのグラフを出してくれたのかは教えてくれません。
ソフトウェア内部では何が行われているかはほとんど分かりませんが、結局は「足し算、掛け算の積み重ね」であることを知ってもらえればと思います。