「高圧ガス」とは文字通り「圧力が高い状態のガス」のことで、高圧ガス保安法によって定義されます。もちろん、高圧ガス保安責任者試験でもほぼ必ず問題にされます。
しかし、この高圧ガスの定義はまったく簡単ではありません。特に、液化ガス(液体窒素などのこと)が高圧ガスにあたるか否かはとてもややこしいです。

たとえば、10℃の水(沸点100℃)やアセトアルデヒド(沸点20℃)は液化ガスか否かわかりますか?
このページでは、高圧ガスの判断ができる条件(圧力・温度など)を一枚にまとめたものを紹介し、さらに液化ガスについて経済産業省が公表しているとてもややこしい高圧ガス保安法の解釈をご紹介します。
高圧ガスの定義とは?
高圧ガスの判断フローをご紹介
高圧ガスかどうかの判断は(ややこしいですが)画一的なので、次の一枚のフローチャートに則ると(一応)スムーズに高圧ガスか否かの区別ができます。

この判断フローを使って、一問一答形式で高圧ガスか否かの判断ができるアプリケーションを作ってみましたので、ぜひ使ってみてください。
いま、気体ですか?

この判断フローは高圧ガス保安法と通達を元に作成しています。
高圧ガスの「定義」は法令でどう決まっている?
「どのような状態が高圧ガスにあたるか」は高圧ガス保安法によって決められています。
この法律では、ガスの状態や物質ごとに圧力や温度の基準が異なり、例えば圧縮ガスは「常用の温度で1MPa以上」、液化ガスは「常用の温度で0.2MPa以上」などと規定されています。
また、アセチレンガスや液化シアン化水素などの特殊なガスについても個別の基準が設けられており、これらの基準を満たすものが「高圧ガス」として扱われます。
- 圧縮ガス:常用の温度で1MPa以上
- 液化ガス:常用の温度で0.2MPa以上
- アセチレンガスなど:特別な基準あり
| ガスの種類 | 高圧ガスの基準 |
|---|---|
| 圧縮ガス | 常用の温度で圧力1MPa以上 |
| 液化ガス | 常用の温度で圧力0.2MPa以上 |
| アセチレン・液化シアン化水素など | 特別な基準 |

常用の圧力・温度とは?定義を理解するキーポイント
高圧ガスの定義でよく出てくる「常用の温度」とは、通常の使用環境下で想定される温度(例えば、反応器の温度では200℃、液化ガスの移送配管では40℃など)のことです。

この温度を基準にして、ガスの圧力が高圧ガスの基準値を超えるかどうかが判断されるんだね。

常用温度や常用圧力は企業が(例えばポンプの吐出圧力等から)決めて、行政に許可申請をします。
高圧ガスの設備では、申請で許可を得た常用圧力や常用温度を超えて運転することは許されません(一般則の第6条第1項第18号、19号などで規制されています)。そのため、企業が行政に申請する常用圧力や常用温度は高ければ高いほど運転の許容範囲が広がります。
しかし、常用圧力や常用温度を高くすればするほど、求められる耐圧や気密圧力が上がったり、高温にも耐えられる材質を利用する必要があるため、高すぎず、低すぎずの常用圧力や常用温度を設定する必要があります。
液化ガスはややこしすぎる!【水でも高圧ガスになりうるか?】
高圧ガス保安法では、液化ガスに関する「高圧ガス」の定義が下記のように決められています。
常用の温度において圧力が〇・二メガパスカル以上となる液化ガスであつて現にその圧力が〇・二メガパスカル以上であるもの又は圧力が〇・二メガパスカルとなる場合の温度が三十五度以下である液化ガス
しかし、「圧力」と「液化ガス」の定義については、実は法律ではあいまいです。

例えば、水蒸気を凝縮させた水は「液化ガス」と言えるのでしょうか?
答えを言うと、「液化ガス」ではなさそうな「水」であっても、例えば185℃以上(蒸気圧1MPaG以上に相当)で液体の水は「高圧ガス状態の液化ガス」になり得ます。
高圧ガス保安法における液化ガスは「経済産業省の通達(高圧ガス保安法及び関係政省令等の運用及び解釈について(内規))」によって解釈されていていますが、この通達がとてもややこしいのです。

この条件は通達と呼ばれる行政機関同士の内規なので、法令ではありませんが、許認可権を持つ行政が則っているルールなので、かなりの重みがあります。
では、順に「液化ガス」と「圧力」の解釈を見ていきましょう。
「液化ガス」について
まずは「液化ガス」の解釈を見てみましょう。経済産業省によると、「液化ガス」とは次のものであると経済産業省は解釈しています。
「液化ガス」とは、現に液体であって、次の①又は②に掲げるものをいう。
① 大気圧下における沸点が40℃以下のもの
② 大気圧下における沸点が40℃を超える液体が、その沸点以上かつ1MPa以上の状態にある場合のもの
つまり、水(大気圧下での沸点100℃)が室温で液体になっているものは「液化ガスではない」と解釈されます。逆に、窒素(沸点ー196℃)やジエチルエーテル(沸点35℃)が室温で液体になっているものは「液化ガスである」と解釈できます。
恣意的?「圧力」には2種類ある
さらに、液化ガスのなかの「圧力」の解釈を見ていきましょう。液化ガスの内、高圧ガスとなるものは法によって次のように定義されます。
常用の温度において圧力が〇・二メガパスカル以上となる液化ガスであつて現にその圧力が〇・二メガパスカル以上であるもの又は圧力が〇・二メガパスカルとなる場合の温度が三十五度以下である液化ガス
なんと驚くことに、上の法文における「圧力」にはそれぞれ別々の意味がある、と経済産業省は通達で解釈を示しています。つまり、経済産業省によると、液化ガスの内、高圧ガスとなるものは次の場合とされます。
常用の温度において圧力(液化ガスの蒸気圧)が〇・二メガパスカル以上となる液化ガスであつて現にその圧力(機械的等、昇圧の手段は問わない)が〇・二メガパスカル以上であるもの又は圧力が〇・二メガパスカルとなる場合の温度が三十五度以下である液化ガス

「その圧力」とまでされているのに、一文の中の圧力を2種類の読み方をするなんて、日本語大丈夫?なんだか文章の読み方が恣意的じゃない?

経済産業省の意図はわかりませんが、液化ガスの定義がかなり緩まるので、規制緩和をしている形です。
これによると、ジエチルエーテル(沸点35℃)をポンプで0.2MPaGまで昇圧した際、35℃を常用の温度とする場合、蒸気圧は0MPaGなので「高圧ガスではない」、常用の温度を56℃とする場合、「蒸気圧は0.2MPaGなので高圧ガスである」という風に解釈できます。
このように、「液化ガス」に関しては高圧ガスになるかどうかの判断がとてもややこしいので、注意が必要です。
まとめ
このページでは、高圧ガスの判断フローと、経済産業省が公表しているとてもややこしい高圧ガス保安法の解釈をご紹介しました。
「高圧ガス」とは文字通り「圧力が高い状態のガス」のことで、高圧ガス保安法によって定義され、高圧ガス保安責任者試験でもほぼ必ず問題にされます。しかし、特に液化ガスが高圧ガスに該当するかどうかは、経済産業省の通達によって法の解釈がサポートされています。
ただし、通達は法令ではなく、経済産業省のただの解釈であるため、経済産業省の通達をそのまま利用して高圧ガス保安責任者の試験問題が作られることは決して無いでしょう。

