菊花火の魅力を徹底解説|尾を引く仕組みと秘密

菊花火

知っている人は知っていますが、花火は「菊」と「牡丹」という2種類に分けられます。この2つは花火が空で開いたときに「引き」と呼ばれる「光の尾」が有るか無いかがポイントです。

この記事では、花火大会でよく見る「菊花火」がどのような花火なのかを知りたい方、さらには具体的にどのような配合で「引き」を作っているかを解説します。

打ち上がった後に光の線を長く残し、夜空に整った大輪を咲かせる菊の魅力を知れば、次の花火大会をより深く楽しめますよ。

目次

花火の菊と牡丹の違いは?開き方・引き・消え方を比較

菊花火はどんな打ち上げ花火?

花火における菊とは、上空で光の尾を引きながら開く花火です。尾があるため、単に一瞬明るく光るだけではなく、開花してから消えるまでの軌跡を観賞できる点が最大の魅力です。

菊花火
引きのある花火

上の動画の光の尾が「引き」です

「菊」の他に「牡丹」と呼ばれる花火もあります。菊と牡丹は、どちらもよく見る代表的な花火ですが、見分けるポイントは花火に光の尾である「引き」があるかどうかです。

菊は引きを持つため、開花後に放射状の線が見えます。一方の牡丹は丸い光の粒がぱっと広がるのが特徴です。

比較項目牡丹
見え方光の筋が放射状に伸びる光の粒が丸く広がる
消え方尾の余韻を残して消える比較的すっきりと消える
写真菊牡丹

牡丹は尾を引かずに丸く開花する花火

牡丹は、菊とは異なり、尾を長く残さずに丸く広がる打ち上げ花火です。菊のような線状の引きがないため、見た目はすっきりとしており、丸みのある花弁を重ねた植物の牡丹を思わせます。

赤、青、緑、金などの鮮明な発色を楽しみやすい点が特徴です。

短い時間でぱっと咲いて消える潔さが牡丹の持ち味であり、連続打ち上げでは明快なリズムを出す効果があります。

菊花火が尾を引く秘密

菊花火は松の炭にポイントあり

菊花火は星に設けられた「引き」の層が燃えることで、花火が開いたときに光の線が空に描かれます。

「星」とは、花火に詰める光や色、音を出すための小さな火薬の粒のことです

花火の星

では「引き」はどのようにして作られるのでしょうか?その答えは、「炭」です。もう少し詳しく言うと、「松の炭」です。

松のような堅い木の炭を使って配合すると、燃えたときに火の粉が出ます。その結果、花火が開いた際にきれいな尾を引いて飛ぶようになります。この松炭の火の粉が菊花火の「引き」の正体です。

なお、手筒花火では松炭だけでなく鉄粉も使って火の粉を出します。

それでは菊花火に使われる「星」の材料を引き続きご紹介します。

星の断面図
星の構造(断面図)

菊花火の星の材料

点火剤

花火が空まで打ちあがって開いた際、全ての星に点火されなければなりません。すべての星に点火されるように、星の一番外側には黒色火薬をメインにした点火剤(口粉)の層があります。

黒色火薬

黒色火薬は硝酸カリウム(硝石)、炭素、硫黄が混合された火薬で、カヤクジャパンなどから黒色小粒火薬などとして販売されていますが、点火剤とするためには市販のものをさらに細かくしたものをまぶす必要があります。

引き

「菊」が「牡丹」ではなく、「菊」であるために必須なのが「引き」の部分です。

「引き」に何を使用するかは煙火業者によって違うでしょうが、清水武夫さんの論文「菊花型花火(割物)の設計条件について」によると以下の配合によって「引き」が作られています。

役割薬品6菊8菊
酸化剤硝石53.748.5
可燃剤硫黄6.55.8
火の粉剤松炭32.338.8
糊剤みじん粉7.56.9

清水武夫さんの論文では、「引き」や「色火剤」の配合も記載されていますが、「色火剤」には松炭は配合されていません。そのため、やはり「松炭」が菊花火の引きを生む原動力です。

松炭が燃えるときれいな火の粉がでます。そのため、星が上空で尾を引いて飛ぶようになるというわけです。

なお、「6菊」や「8菊」とは、酸化剤に対する炭素量(松炭)の割合のことです。6菊(硝石:松炭=10:6)よりも8菊(硝石:松炭=10:8)の方が炭素量が多いことになります。

8菊の方が6菊よりも燃焼速度が遅くなるので、引きが長くなります(寿命が長くなる)が、燃焼温度も下がるので、鮮やかさは下がってしまいます。引きの層が明るく安定して燃えれば、星は飛行中に長い光跡を残し、金色や銀色の糸を引くような菊に見えます。反対に燃焼が短ければ引きはコンパクトになり、輪郭は早めに消えて、色の変化や中心部の演出を際立たせる構成になります。

6菊8菊
寿命短い明るい
鮮やかさ長い暗い

色火剤(いろびざい)

花火のメインとなるのが色なのは間違いありません。この色の違い、例えば赤から緑へ変化、あるいは青から銀に変化など様々な変化を起こすように星は作りこまれています。

色火剤の要素としては①酸化剤、②可燃剤、③炎色剤が必要です。酸化剤と可燃剤は燃焼を起こして高温を作り、炎色剤を発色させるという役割です。

例えば紅色や緑色の場合次のような割合で作られます。

酸化剤過塩素酸カリウム5843
助燃剤1519
BL助燃剤78
糊剤みじん粉65
炎色剤炭酸ストロンチウム20
硝酸バリウム30

材料の性質だけでなく、星の大きさ、表面の仕上げ、湿度や保管状態も燃え方に影響するため、花火師は試作と調整を重ねます。鑑賞時には、光の線が太く力強いか、細く繊細か、どのくらいの時間残るかを比べると、菊ごとの個性を見つけやすくなります。

まとめ

この記事では、花火大会でよく見る「菊花火」がどのような花火なのか、さらには具体的にどのような配合で「引き」のある星を作っているかを解説しました。

特に菊花火は花火大会の冒頭や終わりのあたりに登場することが多いです。菊花火を見たら、フィナーレが近いのだなと先を読めると花火大会をさらに楽しめるようになりますよ。

目次