エアコンでは冷媒が高温高圧の気体から低温定圧の液体まで幅広く状態が変化するため、室内機・室外機において冷媒がどのような状態になっているか知らない方も多いのではないでしょうか?
このページでは冷房運転のエアコンにおいて冷媒がどのようなサイクルで運転されているかをご紹介します。
室内機での蒸発工程
室内機での冷媒の状態を考えましょう。エアコンの室内機で冷媒が液体から気体に蒸発することで、部屋を冷やすことができます。
- 冷たい冷媒によって部屋を冷やすことが目的
- 蒸発器入口は気液混合状態で、モリエル線図において飽和液・飽和蒸気線の間になる
- すべての冷媒の蒸発が終わるまでは冷媒温度は一定のまま
- 冷媒がすべて蒸発すると、冷媒温度が上がりはじめ、最終的に冷媒は沸点から一定の過熱度(5℃程度)だけ高い状態で室外機から出る
- 室内機では冷媒の蒸発が起こる
室内機では冷媒は低圧、低温の状態にあります。室内機で冷媒が蒸発する間は冷媒の温度は変わりません。
「低圧」といっても、大気圧の$10$倍くらいの圧力があるんだね
すべて蒸発しきった後は温度が上がり始め、およそ$5℃$程度過熱された状態で気体となった冷媒は次のコンプレッサーに向かいます。
沸点から上昇した$5℃$程度のことは「過熱度」と呼ばれます
冷媒は室内機の熱交換機入り口では気液混合状態にありますが、熱交換機出口ではすべて気体に変化します。
コンプレッサーでの圧縮工程
室内機を出た冷媒が次に入る機器はコンプレッサーです。コンプレッサーの目的は冷媒を圧縮して高温にすることです。
- コンプレッサーでは冷媒の温度を上げることが目的(昇圧は副産物)
- コンプレッサーへは気体状態の冷媒が入る
- 最終的に冷媒は$3~4\text{MPa}$程度まで加圧される
- コンプレッサーでは冷媒の断熱圧縮が起こる
もし、コンプレッサーに液体が入ると、液体は圧縮が非常に困難のため、コンプレッサーの破損につながります。そのため、コンプレッサーへは冷媒は絶対に気体状態で入る必要があります。
空気は簡単に圧縮できるけど、水は力を加えても体積減らないもんね
液体が入らないようにコンプレッサー直前には気液分離器が配置されます(あるいはコンプレッサーと一体化されています)
室外機ファンでの凝縮工程
コンプレッサーで高温になった冷媒の次の工程は室外機ファンでの凝縮工程です。
- 冷媒にためた熱を外気に捨てることが室外機ファンの目的
- 冷媒の状態は気体から液体に変化する
- 室外機ファン出口での温度は沸点から$5℃$程度低くなる
- 室外機ファンでは冷媒の凝縮が起こる
冷房運転では部屋の熱気を部屋の外へ捨てる必要があります。その具体的な工程が行われるのは室外機ファンです。コンプレッサーで高温にされた冷媒が室外機ファンで外気によって冷やされることで冷媒にためた熱気を外気に渡すことができるのです。
室外機ファンでは気体から液体まで大きく状態が変わるんだね
室外機ファンの入口は過熱気体の状態ですが、ファン出口では完全に液体の状態になります。そのため、モリエル線図上では室外機ファンでの工程は飽和蒸気線と飽和液線の両方をまたぎます。
また、次の膨張弁には液体状態で入る必要があるので、室外機ファン出口では冷媒は液体状態になります。
冷房時に凝縮器だったものは、暖房時は蒸発器に役割を変えます
膨張弁での膨張工程
熱気を外気に捨て終えた後は膨張弁で冷たい冷媒を作ります。
- 冷たい冷媒を作ることが膨張弁の目的
- 膨張弁には液体の状態で入る必要がある
- 膨張弁出口では気液混合状態になるため、飽和液線をまたぐ
- 膨張弁ではジュール・トムソン効果が起こる
部屋を冷やすためには冷媒を冷たい状態でエアコン室内機に持ってくる必要があります。そのための機器が膨張弁です。
膨張弁では冷媒が狭い流路を通ることで冷媒の圧力と温度が下がります(ジュール・トムソン効果)。
膨張弁は紹介した中では最も省スペースな機器で完結する工程です。
まとめ
このページでは冷房運転のエアコンにおいて冷媒がどのようなサイクルで運転されているかをご紹介しました。
エアコンでは冷媒が高温高圧の気体から低温定圧の液体まで幅広く状態が変化しますが、コンプレッサーには気体として冷媒が入り、膨張弁には液体として冷媒が入ることを覚えておきましょう。