ポリエチレンは最もシンプルな構造のポリマーで、単純にCH2が一本鎖のようにつながっていると想像しがちですが、実は作り方によっては無数の枝分かれが出来上がるものもあります。
そのため、耐熱温度が70℃程度のものもあるし、110℃程度のものもあれります。また、やわらかいものから固いものまで様々です。
このページでは、ポリエチレンの種類ごとの特徴から製造方法までを、専門用語をかみ砕きながらわかりやすく解説します。
ポリエチレンの理解度を上げよう
ポリエチレンの種類と分類|LDPE・HDPE
ポリエチレンは、エチレンを重合して作られる高分子材料です。エチレンの分子式はC2H4なので、ポリエチレンは-CH2-CH2-が連続した形で表現されます。

ここまでは高校化学でも教わる内容です
実は、このポリエチレンは大きく分けて2種類あり、低密度ポリエチレン(LDPE)と高密度ポリエチレン(HDPE)があります。
| 低密度ポリエチレン (LDPE) | 高密度ポリエチレン (HDPE) | ||
| 高圧法LDPE (HPLDPE) | 直鎖状LDPE (LLDPE) | ||
| 実用化 | 1941年ごろ | 1977年ごろ | 1954年ごろ |
| 構造 | 枝分かれ多い![]() | 直鎖+短い側鎖多数![]() | 直鎖状 |
| 硬さ | やわらかい | 固い | |
| 耐熱温度 | 70~90℃ | 90~110℃ | |
| 反応環境 | 超臨界状態における ラジカル重合法 | スラリー法や気相法 | |
| 反応圧力・温度 | 高圧・高温 (1500気圧・250℃程度) | 低圧・低温 (10~20気圧・60~100℃程度) | |
| 重合触媒 | 酸素・有機過酸化物 | チーグラー系・ フィリップス系触媒 | |
| 用途 | レジ袋など | ポリタンクなど | |

LLDPEはちょうど真ん中の性質があるんだね
また、HDPEやLDPEはほわっと分けられている訳ではなく、JISによって明確に分類されています(JIS K 6922)
| JIS K 6922による分類 | 密度 (kg/m3)@23℃ |
| HDPE(高密度ポリエチレン) | 940以上 |
| LDPE(低密度ポリエチレン) LLDPE(直鎖低密度ポリエチレン) | 911~925 |
名前は同じポリエチレンでも、やわらかさ、強度、耐摩耗性、成形のしやすさなどが異なるため、LDPEとHDPEは用途に応じて選定されています。それぞれの特徴を見ていきましょう。
低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene)の特徴
ややこしいことに、重合条件が高圧・高温のため、「高圧ポリエチレン」と呼ばれることもあります。これは、高圧による重合⇒ポリマーの枝分かれ多い⇒結晶性が低い⇒低密度になるためです。

低密度ポリエチレンは、分子鎖に枝分かれが多い構造を持つため、全体として密度が低く、やわらかくしなやかな性質を示します。透明性や柔軟性に優れ、フィルムや袋類に使いやすいのが特徴です。スーパーの袋、ラップに近い包装材、やわらかいチューブなどでよく見られます。

また、LDPEには、1000気圧を超える圧力で重合させるHPLDPE(High PressureのLDPE)と低圧条件でチーグラーで作るLLDPE(LinerなLDPE)の2種類があります。
この内、伝統的なLDPEは1940年代に実用化されたHPLDPEです。一方のLLDPEは1970年代に開発され、マイルドな反応条件のため、エネルギーコスト、建設コストが安いというメリットがあります。
しかし、HPLDPEにはLLDPEよりも、分子量分布が広い、長鎖分岐を多く持つという代えがたいメリットがあるため、今でももHPLDPEの方がLLDPEより多くの生産能力があります。
| 各社の生産能力 (千トン/年) | HPLDPE | LLDPE | HDPE |
| 日本ポリエチレン | 291 | 271 | 423 |
| 東ソー | 152 | 31 | 112 |
| 旭化成 | 121 | 0 | 116 |

HPLDPEの方が実用化が早かったため、そのままプラントが残っているという側面もあります
高密度ポリエチレン(High Density Polyethylene)の特徴
一方、高密度ポリエチレンは逆に重合条件が低圧・低温のため、「低圧ポリエチレン」と呼ばれることもあります。これは、低圧による重合⇒ポリマーが直鎖上⇒結晶性が高い⇒高密度になるためです。

その結果、高密度ポリエチレンは強度や耐薬品性、耐久性に優れています。そのため、洗剤ボトル、灯油缶、ポリタンク、パイプ、バケツなど、しっかりした形状を保ちたい製品に多く使われます。
最も有名なHDPEの製造方法は、チーグラー(Ziegler)触媒を用いたものです。ドイツ人であるZieglerが1953年の終わりごろに(C2H5)3AlとTlCl4の触媒によって、エチレンが常圧でもポリマーに重合することを発見したことが高密度ポリエチレンの始まりです。

Zieglerはその後ノーベル賞を受賞しています
あまり知られていませんが、実は同時期(1954年)にアメリカのPhilips社によってフィリップス触媒というCr系の触媒が発見されており、フィリップス触媒は幅広い分子量分布や長い分岐鎖を持たせることができるため、チーグラー触媒と並んで重要な触媒です。
| 触媒 | 発見者 | ラボで発見された時期 | 分子量分布 (Mw/Mn) | 長鎖分岐数 (個/1000炭素) |
| チーグラー系 | Ziegler (ノーベル賞) | 1953年 | 3~6 | 0 |
| フィリップス系 | Philips社 | 1951年 | 6~15 | 約1 |
「ポリエチレン技術読本」にはポリエチレンの製造方法が詳しく説明されています。
特に、HDPEやLLDPEの製造方法(スラリー法、溶媒法、気相法)ごとのメリット、デメリットが歴史的な観点やPFDを交えて詳しく説明されています。
チーグラー系触媒やフィリップス系触媒の化学的な構造にもページが咲かれているため、化学工学系だけでなく、化学系の学習にもおすすめです。
ポリエチレンの製法
低密度ポリエチレン(高圧ポリエチレン)の製法
低密度ポリエチレンには1000気圧を超える環境で生産するHPLDPEとマイルドな環境で直鎖状のポリマーを生産するLLDPEの2つがあります。ここではHPLDPE(高圧LDPE)について解説します。

LLDPEは、エチレンだけでなくαオレフィン(例えば1-ヘキセンなど)を混ぜて重合させただけのため、プロセス自体はHDPEと大差ありません。
高圧低密度ポリエチレンではエチレンを1000気圧を超える高圧・高温の状態にして重合します。1500気圧・250℃程度までエチレンを加圧すると、エチレンは臨界点を超え、気体と液体の区別がつかない超臨界状態になります。
臨界状態のエチレンに対して、$300\sim600\text{ppm}$程度の酸素や、有機過酸化物(パーオキサイド)を添加することでラジカル重合が始まります。

重合が終わった後、圧力が低い分離器にはいると、エチレン中のポリエチレンの溶解度が低下するため、製品であるポリエチレンが分離されます。その後、分離器から出たポリエチレンは押出機へ入り、ペレット状の製品が出来上がります。

反応管の長さは1km程度もあるそうです。
高密度ポリエチレン(低圧ポリエチレン)の製法
高密度ポリエチレン(HDPE)は、①HDPEはポリマーが溶媒に溶けず、懸濁した状態で重合を行うスラリー法、②ポリマーが溶媒に溶解した状態で重合させる溶液法、③溶媒自体を使用しない気相法のいずれでも製造が可能です。

スラリー法も溶液法も重合方式としてはどちらも溶液重合にぶんるいされます。

いずれも高圧法よりずいぶんマイルドな反応環境だね
| 重合様式 | 反応温度・圧力 | 反応器 | 触媒 |
| スラリー法 | 60~100℃ 0.5~4MPa | バッチ式 | チーグラー系 |
| ループ式 | チーグラー系、フィリップス系 | ||
| 溶液法 | 125~230℃ 2.5~20MPa | バッチ式 | チーグラー系 |
| 気相法 | 60~100℃ 1.5~3MPa | 流動層 | フィリップス系 チーグラー系 |
| (参考)高圧法 (HPLDPE) | 200~260℃ 100~300MPa | バッチ式 管型 | 酸素、過酸化物 |
これらの中でHDPEの製造に最も利用されているのは「スラリー法」です。スラリー法には、ポリマー同士が溶媒中でくっついたり、反応壁への付着するなどのデメリットがあるものの、溶液法よりもエネルギーコストが低く、気相法よりも生産性が高いなどのメリットがあるためです。
| メリット | デメリット | |
| スラリー法 | プロセスが簡便 (1950年代後半に実用化) | 反応器壁へのポリマー固着 (定期的な清掃が必要) |
| 溶液法 | プロセスが簡便 (1950年代後半に実用化) 小さな反応器でも生産可能 (少量多品種向き) | 高分子になると溶液粘度が上がる (生産困難になる) 溶媒除去が必要 (エネルギーコスト大) |
| 気相法 | 溶媒を使わない 重合熱除去が循環ガスで可能 (エネルギーコスト低) | プロセスが高度 (1970年代後半に実用化) ポリマーの滞留時間が長い (生産フローが低い) |
スラリー重合プロセスでは反応器自体が二重管構造になっているパイプループ式の反応器で重合を行います(フィリップスプロセス)。二重管の外側に冷却液を入れることで反応熱を除熱させ、さらに、ポリマーが反応器にくっつかないように、ポンプ(軸流型)を使ってスラリー液を循環させながら重合を行います。

溶媒としてはイソブタンやシクロヘキサンなどが使われ、反応はおおよそ100℃、4MPa程度、スラリー中のポリマー濃度は10wt%程度です。溶媒はフラッシュドラムでガスとなって、ポリマーから分離されます。

フィリップスプロセスにはもともとフィリップス系触媒だけが用いられていましたが、現在は多くのメーカーがチーグラー系触媒によるHDPE生産として利用しているとのことです。
まとめ
このページでは、ポリエチレンの種類ごとの特徴から製造方法までを、専門用語をかみ砕きながらわかりやすく解説しました。
ポリエチレンは非常に基礎的なポリマーであるため、現在まで残っているプロセスはスラリー法であれ、気相法であれ、非常に洗練されており、高い生産性を持っています。
しかし、ポリエチレンは昭和の時代から各社のプラント同士の統廃合が続いていますし、現在も統廃合の噂は絶えません。統廃合のニュースを見たときは製法の違いにも着目すると面白いかもしれません。



