【オゾン層はもう壊さない】フロンの進化を世代ごとにご紹介

フロンの進化を世代ごとにご紹介

私は資格の中でも「高圧ガス保安責任者」押しであるのですが、その理由は化学に関する様々な知識が「高圧ガス保安法」にちりばめられているためです。その中で、今回は高圧ガス保安法のなかの冷凍機に関する話題です。

実は同じ能力の冷凍機であっても、使われる冷媒の種類によって、設置の際に行政の「許可」が必要なもの、あるいは「届出」でよいものが変わります。(例えばフロンR32は届出の範囲が広い)

これを受けて、フロンの歴史的な進化を調べたいと思ったので、調べてみました。フロンの進化を是非、見てみてください。

nablaです。化学工場で働いています。
化学に関することを聞かれていなくてもしゃべっていくサイトです。

目次

【~1980年代】CFC

CFC(クロロフルオロカーボン)は1928年にアンモニアなどの代わりの冷媒としてアメリカで開発された冷媒です。「不燃性」「化学的安定性」「気化・液化の容易性」「(人に対する)無害性」などの特徴から爆発的に利用量が増えました。

フロンの種類
CFC(一番左)はClを持ち、Hを持たない

国内で初めてフロン冷凍機が利用されたのは、1939年の伊号第171潜水艦とされます(現在のダイキンが設置)。

フロンを初めて使った潜水艦
伊号第171潜水艦に国内初のフロン冷凍機が使われました

しかし、1970年代にCFCはオゾン層を破壊することが明らかになり、1989年に発効したモントリオール議定書による規制のため、生産・消費量は急激に減少しました。

大分類合成冷媒自然冷媒
小分類フロン冷媒グリーン冷媒
特定フロン代替フロン
名称CFCHCFCHFCHFOーーーーー
年代~1980年代1990年代2000年代2010年代~
R11、R12R22R32、R410AR1234yfブタン、アンモニア
オゾン破壊性大きい小さい無い
温暖化係数大きい小さい

一番初期の冷媒だから、オゾン破壊性もあるし、地球温暖化係数も大きいんだね

CFCのオゾン破壊性が高い理由は、炭化水素の水素原子が全て$\text{Cl}$原子と$\text{F}$原子に置き換えられているためです。

対流圏に届く光では分解を受けず、$\text{OH}$ラジカルとも反応しないため、対流圏には消失過程がありません。

CFCは成層圏に到達して初めて光分解を受け、CFCから発生する塩素原子がオゾンを破壊する触媒として効率的に機能してしまうためです。

ClOxサイクル
ClOxサイクルの例
オゾン分解反応で重要となる空気中の濃度について

オゾンの分解反応を考えるうえで重要となる、各成分の濃度例は下表の通りです。

成分濃度($\text{molecules cm}^{-3}$)
$\text{O}_3$$3.0\times10^{12}$
$\text{O}\cdot$$3.0\times10^{7}$
$\text{NO}$$7.0\times10^{8}$
$\text{NO}_2$$2.2\times10^{9}$
$\text{HO}_2\cdot$$8.5\times10^{6}$
$\text{CH}_4$$2.8\times10^{11}$
【参考】全成分$6.4\times10^{18}$
高度30km(成層圏)における空気中成分の濃度(D.J.ジェイコブ著 大気化学入門より)

意外に$\text{O}\cdot$ラジカルって多いんだね

CFCがオゾン層を破壊するメカニズムを1974年に発見したマリオ氏、ローランド氏は1995年にノーベル賞を受賞しています

CFCの特徴
メリットデメリット
・安価・オゾン破壊性が非常に大きい
・安定性が高い・地球温暖化係数が非常に大きい

【1980年代】HCFC

HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)はCFCの代わりとして使用されるようになりました。

CFCは$\text{H}$原子を一つも持っていませんが、HCFCは$\text{H}$原子を一つ以上持っていることが特徴です。

フロンの種類
HCFC(一番左)はClを持ち、Hも持つ
大分類合成冷媒自然冷媒
小分類フロン冷媒グリーン冷媒
特定フロン代替フロン
名称CFCHCFCHFCHFOーーーーー
R11、R12などR22などR32、R410AなどR1234yfなどブタン、アンモニアなど
オゾン破壊性ありなし
温暖化係数大きい小さい

HCFCはCFCにくらべるとオゾン破壊性は1/100程度に抑えられています。

HCFCはCFCの代替として開発されましたが、あくまでもオゾン破壊性がない冷媒までの「つなぎ」であったため、活躍した期間は短いです。

HCFCの特徴
メリットデメリット
・CFCよりもオゾン破壊性が小さい・オゾン破壊性がゼロではない
・地球温暖化係数が非常に大きい

HCFCがオゾン層破壊を起こしにくいのは、主に対流圏で水酸化ラジカル($\text{OH}\cdot$)によって水素原子が引き抜かれることで分解消滅し、成層圏まで運ばれにくいことためです。

HCFCの分解例
HCFCの分解例

$[\text{OH}\cdot]$は0.1pptv程度でしかありませんが、HCFCだけでなく、NOxやメタンなども分解しています

OHラジカルは「大気の掃除屋」なんだね

航空機によって対流圏上部の$\text{HO}_2\cdot$や$\text{OH}\cdot$などの濃度が測定されており、大気中の日中における$\text{OH}\cdot$、$\text{HO}_2\cdot$ラジカルの典型値は$\sim10^6$、$10^8\text{molecules cm}^{-3}$程度です。(秋元 肇著 大気反応化学 より)

フロン(CFC、HCFC)のおすすめ本

「朝倉化学大系 大気反応化学」にはフロンだけでなく、アルカンやアルケンが大気中でどのような経路で反応するか詳しく解説されています。特に、対流圏と成層圏それぞれで重要となる反応機構を区別してわかりやすくしてくれています。

大気中の反応は経路がたくさん考えられるため、独学が難しい領域です。「大気反応化学」では、様々な反応経路と反応割合を図を交えて詳しく説明されているので、お勧めです。

【1990年代以降】HFC

HCFCによってオゾン層を破壊することは減りましたが、まだ完全にオゾン層破壊性が無くなったわけではありません。HFCはHCFCから塩素原子をなくすことで、オゾン破壊性をゼロにしたものです。

フロンの種類
HFC(一番右)はClを持たず、Hは持つ
大分類合成冷媒自然冷媒
小分類フロン冷媒グリーン冷媒
特定フロン代替フロン
名称CFCHCFCHFCHFOーーーーー
R11、R12などR22などR32、HFC-134aなどR1234yfなどブタン、アンモニアなど
オゾン破壊性ありなし
温暖化係数大きい小さい

代表的な例として、R32、R410Aなどがあり、現代においても冷媒の大きなシェアを持っています。

フロン
エアコンにはHFC(R32など)が使用されています
HFCの特徴
メリットデメリット
・オゾン破壊性がゼロである・地球温暖化係数が非常に大きい
($\text{CO}_2$の1000倍程度)

【現在~未来】グリーン冷媒

オゾン破壊性はなくなったものの、HFCには温暖化係数が大きいという課題があります。

そこで、温暖化係数を低減したものがグリーン冷媒と呼ばれるもので、R1234yfのような炭化水素オレフィンや、ブタンといったハロゲン類を一切含まないものまであります。

大分類合成冷媒自然冷媒
小分類フロン冷媒グリーン冷媒
特定フロン代替フロン
名称CFCHCFCHFCHFOーーーーー
R11、R12などR22などR32、R410AなどR1234yfなどブタン、アンモニアなど
オゾン破壊性ありなし
温暖化係数大きい小さい

グリーン冷媒の中でもHFOはHFCまでのフロン冷媒とは異なり、二重結合を有しています。そのため、大気中で分解されやすく、温暖化係数を小さくできています。

例えば、エチレンはエタンよりも$\text{OH}\cdot$との反応速度が10倍以上大きいです。(秋元肇 大気反応化学より)

HFOは二重結合を持たせることで大気中での半減期を短くさせているんだね

現在で最も普及が進んでいるHFOの一つにR1234yfがあり、カーエアコン用の冷媒などとして従来の冷媒からの置き換えがかなり進んでいます。

まとめ

このページでは、フロン類の種類として、CFC、HCFC、HFC、HFOをご紹介しました。

1920年代に開発され、爆発的に使用量が増えたものの、オゾン破壊性により使用が禁止されたCFC。オゾン層を破壊しないフロンが開発されるまでの「つなぎ」として利用されたHCFC。オゾン層破壊性をゼロにし、現在に至るまで広く利用されているHFC。そして、温暖化係数を小さくすることができるHFOや自然冷媒へと近年は利用が移ってきています。

冷蔵庫などは自然冷媒への移行が進んでいますので、家電量販店で冷蔵庫を見る際は一度注目してみてください。

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