みなさんは「トレーサビリティ付き圧力計が必要と言われたが意味がわからない」「校正証明書とトレーサビリティの違いが曖昧」といった疑問をもったことはありませんか?
トレーサビリティ(トレサビリティ)は現場についている圧力計や温度計、あるいは肉厚測定器に至るまで、計器や測定器の精度を担保する重要な役割を持っています。
このページでは、トレーサビリティについて、単なる用語説明ではなく、実際の現場で困らないための確認ポイントまで解説します。
トレーサビリティとは?圧力計に必要な理由をまず理解しよう
トレーサビリティの意味と一般的な用語の定義
化学工場の安全性や生産性・品質のコントロールには、現場にある圧力計や温度計の「正確性」が欠かせないですよね?
トレーサビリティとは、それら圧力計や温度計などが示す値の正確性を、国家標準につながる校正の連鎖によって説明できる状態を指します。

つまり、計器の表示値が正しいと判断する根拠を、検査記録の体系でたどれる状態がトレーサビリティです。
そのため、圧力計などを設置する際は、計器本体だけでなく、以下の項目を明らかにするため、校正証明書、トレーサビリティ体系図がセットで求められる場面が多くあります。
- いつ、どの標準器で校正されたか
- 標準機との誤差はどの程度か
- 精度を保てる有効期限はいつまでか
高圧ガス設備で圧力計のトレーサビリティが必要になるケース
特に高圧ガス設備では、圧力や温度の測定値の誤りが安全性に直結するため、圧力計や温度計を「なんとなく」つけているだけでは不十分です。
実際、高圧ガス保安法の製造細目告示の第6条や第7条には、圧力計や温度計は計量法に則った精度を有しなければならないと書かれています。
圧力計は、(中略)計量法第104条第2項の規定により定められた圧力基準器に対応する期間内に攻勢を行った圧力計(中略)と比較した場合における計量値の誤差が当該圧力計の目量の1/2以内であること。(後略)
製造施設の位置、構造及び設備並びに製造の方法等に関する技術基準の細目を定める告示 第7条第1項第3号

製造細目告示は法令なので、トレサビリティのとれていない計器を使うと法令違反になります。
そのため、高圧ガス保安法では、申請資料、完成検査、定期自主検査、社内監査、行政監査などで、使用している計器のトレーサビリティが求められます。例えば、耐圧試験では測定した圧力値の信頼性が厳格に問われます。
トレーサビリティ体系|国家標準とのつながり
現場で使う計器は、メーカーや校正機関が保有する標準器で校正されます。そして、その標準器は国家標準へとつながっています。この連鎖(つまり、トレーサビリティ)が明確であるほど、測定値の信頼性を説明しやすくなります。
トレーサビリティとして重要となる「校正証明書」と「トレーサビリティ体系図」について、以下では圧力計を例に詳しくあ既設します。
校正証明書
圧力計は使用を続けるうちに、機械的摩耗、振動、温度変化、過圧、経年劣化などの影響で指示値がずれることがあります。校正の役割は、圧力計がどれだけ正しい値を示しているかを客観的に確認し、誤差があれば補正・補修することです。

ずれを放置すると、運転状態を誤って判断したりするリスクが高まります。
そのため、校正は計器の精度を維持するために重要なものです。例えば、下の圧力計を校正する場合を考えてみましょう。

まず、「どの圧力計を校正したか」を明らかにする必要があります。1つの圧力計を特定するために重要となるのが、「製造番号」や「器物番号」と呼ばれるものです。これらは圧力計のゲージ内部に書かれているため、探すのに苦労はしません。

例えば、上の圧力計の場合、製造番号は「1234567」です。

「1234567の圧力計を校正しました」と圧力計を特定できるんだね
「この圧力計を校正しました」と明らかにするのが校正証明書で、下のようなものが手に入ります。

校正証明書は、対象の圧力計をどの標準器を用いて、いつ、どの条件で校正されたかを示す正式な書類です。ふつう、製品名、型式、製造番号、校正日、校正用標準器、校正環境、発行者情報などが記載されます。
この内、トレーサビリティに最も重要となるのが、「校正用標準器」です。上の校正証明書の例の場合、「校正用標準器として器物番号ABCを使って校正しました」という情報がトレーサビリティ上、最も重要です。
次に、トレーサビリティ体系図について解説します。
トレーサビリティ体系図はどう構成される?国家標準からメーカー校正まで
さて、校正を行って、校正証明書を手に入れましたが、「そもそも校正の標準器が壊れていたらどうする?」という疑念を持たれる場合があります。そのため、校正の際に使用した標準器が「粗悪品ではないこと」を伝える必要があるのです。
トレーサビリティ体系図は「標準器自体がどの程度精度があるか」を図形的に示すものです。最上位に国家標準があり、その下に認定校正機関やメーカー保有の標準器、さらにその下に現場で使う圧力計が位置する構造です。

メーカーが圧力計を校正する際には、自社の基準器を使用しますが、その基準器自体も外部の上位標準で定期的に校正されていなければなりません。

つまり、現場の計器の信頼性は国家標準とのつながり(トレーサビリティ)によって支えられています。トレサビリティ体系図は、この関係を一目で示す資料であり、校正証明書だけでは見えにくい「標準の系譜」を補足する役割があります。

高圧ガス設備の検査では、トレーサビリティ体系図の提出を求められることも少なくありません。
校正証明書と検査成績書の違い
校正証明書と似た言葉に検査証明書があります。
検査成績書は、製品が出荷時や検査時点で所定の仕様や基準に適合しているかを示す書類です。校正証明書と似ていますが、目的は「標準との比較による測定値の根拠提示」よりも、「製品としての適合確認」に重きがあります。
そのため、検査成績書だけではトレーサビリティを十分に説明できない場合があります。一方で、現場では検査成績書に精度等級や検査結果が記載されているため、製品選定や受入確認には有用です。
| 書類名 | 主な目的 | 確認したい内容 |
|---|---|---|
| 校正証明書 | 測定値の根拠提示 | 標準器、校正日 |
| 検査成績書 | 仕様・基準への適合確認 | 精度等級、検査項目、判定結果 |
| トレーサビリティ体系図 | 標準へのつながり説明 | 上位標準との関係 |
まとめ
このページでは、トレーサビリティについて、単なる用語説明ではなく、実際の現場で困らないための確認ポイントまで解説しました。
トレーサビリティは現場についている圧力計や温度計、あるいは肉厚測定器に至るまで、計器や測定器の精度を担保する重要な役割を持っています。
現場の計器を見かけた際は、それがどれだけ小さな計器でも最終的には国家標準までつながっていけることを意識すると、面白いですよ。もちろん、トレーサビリティがあれば。

