浮き屋根の石油タンク、雨が降っても、人が歩いても大丈夫?

浮き屋根タンク

普通の人にはあまり縁はありませんが、石油やガソリンを大量に保管する際には「浮き屋根タンク」と呼ばれる巨大な円形のタンクが使われています。この「浮き屋根タンク」は文字通り屋根が浮いています。外からは見えませんがね。

浮き屋根タンクの「浮き屋根」は、ペラペラの発泡スチロールが石油の上に浮いているわけではないので、人が上に乗って歩けるものになっています。

このページでは、浮き屋根式タンクの基本構造、蒸発を抑える構造、雨水排水の仕組みなどをイラストを使って説明します。

浮き屋根タンクの基本クイズ

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目次

浮き屋根タンクとは?

浮き屋根式タンクが石油・ガソリン貯蔵に使われる理由

浮き屋根タンクとは、原油、ガソリン、ナフサなど、蒸発しやすい石油類を大量(10万kLとか)に貯蔵する円筒形タンクです。

石油やガソリンは揮発性があるため、タンクは常に蒸気を逃がしていますが、普通のタンク(固定屋根)に貯蔵すると、液面上部の空間が大きいため、蒸発による石油損失が大きくなります。

石油蒸気が大量に排出されると、環境への影響もおおきいね

一方、浮き屋根タンクでは、タンクの屋根が液面に連動して動くため、蒸気が発生・滞留する空間を減らすことができます。その結果、浮き屋根タンクは製品ロスを抑制しやすく、周辺環境への影響低減にも役立ちます。

浮き屋根タンクのメリット・デメリット

繰り返しになりますが、浮き屋根式タンクは貯蔵量の変化に屋根が追従することで、蒸発を抑制し、貯蔵中の蒸発損失を低減できます。

大容量の原油や石油製品を貯蔵する設備として広く活用されているんだね

一方で、浮き屋根式タンクは可動部が多いため、保守を怠ると性能や安全性が低下しやすいというデメリットもあります。例えば、排水の詰まりが起これば、屋根に雨水が溜まって屋根が沈下してしまいます。また、タンク側板と屋根の間をふさぐシールは、上下動するたびに摩耗・劣化するので定期的な交換が必須です。

観点主なメリット主な留意点
蒸発・環境対策蒸気空間を小さくし、蒸発損失やVOC放散を抑えやすいシールの劣化や隙間があると効果が低下する
貯蔵効率原油や製品油の大容量貯蔵・液位変動に対応しやすい基地全体で防災・排水・消火設備を整備する必要がある
雨水対策適切なドレン設計により屋根上の水を排出できる詰まりや損傷を放置すると滞水・偏荷重につながる
保守管理計画保全により長期使用を目指せるポンツーン、シール、可動配管の継続点検が必要

石油タンクの浮き屋根の構造|デッキ・ポンツーン・シールの働き

それでは、浮き屋根タンクを構成するものを解説していきます。

浮き屋根の概要

浮き屋根(デッキ、床)

浮き屋根タンクの「浮き屋根」をまずは解説します。石油からすると「屋根」ですが、点検する作業員からすると「床」になります。

浮き屋根(床)は人が歩くだけでもぺこぺこへこむくらい柔らかいです。だから、浮き屋根タンクの屋根は真っ平ではなくて、浅い水たまりが何か所もできるくらい凸凹しています。

浮き屋根タンク_デッキ

浮き屋根タンクの屋根(床)は軟鋼やアルミニウム合金でできています。大きな浮き屋根タンクは直径100mを超えるものもあるため、そんな大きな丸い軟鋼は売っていません。そのため、屋根は複数の正方形の軟鋼を溶接して作られていています。

ポンツーン

浮き屋根タンクの屋根は当然石油やガソリンよりも重いです。だから、それだけでは屋根は沈んでしまって、浮き屋根にはなりません。そこで、設けられているのが「ポンツーン」です。

浮き屋根タンク_ポンツーン

ポンツーンは「浮力を持つ設備」という意味があって、浮き屋根の周縁部などに設けられる箱状・円筒状の中空浮力室です。おおよそ、壁に沿って40~50個程度設けられており、内部に空気を保持することで浮力を生み、屋根本体、雨水荷重などを支えます。

ポンツーン

浮き屋根タンクは屋根に250mmの水が溜まっても沈まない浮力が必要です(消防法、危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示)。

また、ポンツーンは完全に密閉されているわけではなく、通気口を持っています。(もちろん、雨が入らないように、傘の持ち手を反対にした形をしています)。通気口がある理由は、気圧の変化でポンツーンがつぶれたりしないようにであったり、ポンツーンの溶接部から石油が入っていないかガス検知器を突っ込んで内部の漏えい検査ができるようにするためです。

シール

ポンツーンが壁沿いにあるだけでは、壁とポンツーンとの間から石油がどんどん大気に蒸発していってしまいます。そこで、浮き屋根の外周部には漏れ防止にシールが取り付けられます。

浮き屋根タンクシール

シールにはNBRなどのゴムが使われているため外見は黒色で、中にウレタンフォームが入っており、手で強く押すと少しへこむくらいの弾力があります。この弾力によって、壁とポンツーンとの間を埋めて石油の蒸発を防ぎつつ、壁とずれ動くだけの弾力があるので、浮き屋根を実現できているというわけです。

なおシールの上方には「ウェザーシールド」というものもありますが、雨をざっくり防ぐという目的のため、石油の蒸発を防ぐ効果は期待されていません。

シールはウェザーシールドをめくると手に届くところにあります

シールは蒸発抑制に直結する重要部品ですが、ずれ動いているので摩耗が起こります。そのため、タンクの開放検査のたびに交換が必要になってきます。

排水口

当然、雨の日もありますから、浮き屋根タンクには雨を外に流すための排水口があります。どこにあるかというと、(私の知っているものは)タンク床の真ん中にあります。

浮き屋根タンク_排水口

一般的には、屋根上の集水部からドレン配管を通じて、雨水をタンク外へ導く仕組みが採用されます。屋根は液面とともに上下するため、配管やホースにはその動きに追従できる構造が必要です。

排水口は直径100cm程度の大きさです。私の地域では過去に100mm/hrを超える雨が降ったこともありますが、特に浮き屋根の排水は問題になりませんでした。

ルーフサポート(激突防止)

実は浮き屋根タンクの屋根には「ルーフサポート」という大量の突起があります。10万kLクラスで大体40~60個くらいでしょうか。とにかくたくさんあります。

浮き屋根タンク_ルーフサポート

ルーフサポートが無かった場合、石油の貯蔵量が減ると、屋根が一番下までいってしまいます。そうすると、屋根がタンク底の配管と接触してタンク壊れてしまいます。

そんなことにならないよう、激突防止のため浮き屋根タンクにはルーフサポートが大量に配置されています。

通気口

浮き屋根タンクの存在意義は「できるだけ石油を蒸発させないこと」ですが、完全に密封してしまうと、大気圧との圧力差が生まれて、タンクがへこんでしまいます。

そうならないよう、浮き屋根タンクにも数か所に通気口が設けられており、常に内部からでた石油の蒸気を外に逃がしています。

浮き屋根タンク_通気口

そのため、浮き屋根タンクに降りると溶剤臭(ガソリン臭)がすさまじく、特に、H2S濃度が上がってしまうと命の危険があるため、常にガス検知器の携帯が必須です。

ローリングラダー

浮き屋根タンクの屋根(床)に降りるための階段を「ローリングラダー」といいます。

浮き屋根タンクは屋根の高さが常に変わるので、ローリングラダーも屋根(床)の高さと追従できるよう、下には走行レールと車輪が設けられています。

私はタンクレベルが高いときに降りたことがなく、その時は緩い階段でした。もし、タンクが空に近い状態になった場合は、ローリングラダーは文字通りはしごのようになってしまうのではないかと恐れおののいています。

液面計

液面計はタンクの外側にある設備です。浮き屋根タンクの液面を図るのに使われるのは「フロート式の液面計」です。

液面計自体の目盛りは「体積(m3)」ではなくて「高さ(m)」単位になっています。

浮き屋根タンクは海外から来た原油を直接受け入れることもあるので、税関承認品を使う必要があります。この液面計の精度は非常に高く、1mm単位で液面の変化を追っています。

さらに受入、受払等の記録については税関によるチェックを受けています。

撹拌機

浮き屋根タンクは屋根が液面とともに上下するため、撹拌機は上部からシャフトを挿入する形式ではなく、側面に横向きで取り付けられます。おおよそ3台ほどが取り付けられる場合が多いです。

この撹拌機によって原油や重油の成分均一化、スラッジ(固形物)の堆積防止、温度の均一化が図られています。

まとめ

このページでは、浮き屋根式タンクの基本構造、蒸発を抑える構造、雨水排水の仕組みなどをイラストを使って説明しました。

残念ながら、浮き屋根タンクに入れる機会はあまりありませんが、実は浮き屋根タンクの上は歩けること、シールはゴム製のものが使われていて、液面が動くたびに引きずられていることを知っていただければと思います。

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