手筒花火とは?|竹・火薬・縄に宿る職人技の基本

手筒花火

手筒花火は、火薬を詰めた筒を演者が両手や脇で支え、上方へ火柱を噴き上げる伝統花火です。愛知県の三河地方を代表する文化として知られ、神社の祭で五穀豊穣などを願って奉納されてきました。

一般的な打ち上げ花火のように遠くの空を見上げるのではなく、手筒花火の魅力は何といっても火を抱える演者の姿、轟音、火の粉、熱気を地上で感じられることです。

このページではそんな手筒花火の魅力や構造までをご紹介します。

目次

手筒花火とは?火柱を抱える伝統花火の魅力と見どころ

竹筒から噴き上がる火柱と、最後に響く「ハネ」の迫力

手筒花火では、節を抜いた孟宗竹などの丈夫な竹筒に火薬を詰め、点火後に筒の上部から勢いよく火柱を噴出させます。火柱の高さや太さ、噴出時間は筒の大きさや火薬の量、製作方法などによって異なり、演者は筒の姿勢を保ちながら最後まで火を支えます。

見どころは噴き上げだけではありません。燃焼の最後には、筒の底から爆音とともに火花が下方へ放たれる「ハネ」と呼ばれる現象があり、会場の迫力を一気に高めます。

火の粉を浴びながら奉納する、手筒花火ならではの魅力

手筒花火の魅力は、単に火力の強い花火を眺めることではなく、演者が火と向き合う姿にあります。揚げ手は防火性を考えた装いで竹筒を抱え、身体の近くに落ちる火の粉や熱気のなかで、定められた作法と役割を守って放揚します。

手筒花火

その姿には勇壮さがありますが、無謀な度胸試しではありません。地域の経験者が製作、運搬、点火、誘導、消火までを分担し、神事や祭礼として長年培われた規律のもとで実施されます。観覧者は演者の勇気だけに注目するのではなく、支える人々の連携、奉納に込める願い、地域ごとの掛け声や進行にも目を向けると、より深く味わえます。

打ち上げ花火との違い:手持ちで挑む花火の魅力

打ち上げ花火は、発射筒から花火玉を上空へ打ち出して開花させる形式が中心です。

一方の手筒花火は、竹筒自体を人が保持し、筒内で燃焼する火薬の力によって火炎と火花を上方へ噴出させる吹き上げ式の花火です。そのため、観客が注目する対象は夜空の大輪ではなく、地上に立つ演者と火柱です。

比較項目手筒花火打ち上げ花火
見どころ地上から立ち上がる火柱と演者上空で開く花火玉
放揚方法演者が竹筒を保持して噴出させる発射筒から花火玉を打ち出す
魅力熱気、轟音、所作、奉納の緊張感色彩、形、広がり、夜空の演出

竹・縄・火薬でつくる手筒花火の構造と職人技

手筒花火は、一見すると素朴な構造に見えますが、燃焼時には強い熱と圧力が生じるため、材料の選定、加工精度、火薬の取扱い、放揚時の姿勢まで、すべてに専門的な経験と厳しい管理が求められます。

手筒花火を見る際は、竹・縄・火薬という素材に地域の知恵と安全への配慮が重ねられていることを理解すると、火柱の見え方がより深まります。

基本的に竹はもう使われていない

残念ながら、昔の手筒花火は竹に火薬を詰めて作られていましたが、今ではほぼ紙製の筒が使われています。天然の竹には「自然のもの」という何にも代えがたいメリットがありますが、節の部分などが一本一本ことなり、強度も不安定なためです。

奉納花火などでは現在でも竹を使っているところもあるようです

紙筒の大きさにはいくつか種類がありますが、手に持つタイプの手筒花火の場合、直径10cm程度、長さ70cm程度の紙筒の中に火薬を詰めることが多いです。

手筒花火

縄を巻き締める理由

手筒の外側に縄を幾重にも巻くのは、伝統という側面もありますが、技術的には取っ手の確保や演技中に受ける熱や負荷・衝撃に備えるためです。

火薬を紙筒に詰めてから縄を巻く方法と、逆に縄を紙筒に詰めてから縄を巻く方法があるようですが、グループや流派によってばらばらで、決まった方式というのはありません。

手筒花火

火薬の調合は人それぞれ

手筒花火は花火なので、火薬が必要になります。手筒花火で必要となる火薬類はざっと次のようなものがあります。

名前役割備考
硝石酸素供給剤
硫黄可燃物・バインダー
可燃物松の灰
鉄粉火の粉剤鋳物を削った粉
黒色火薬ハネ用

手筒花火の紙筒の内は大きく2つに分かれています。噴出部分とハネ部分です。

手筒花火の構造

噴出部分には主に硝石、硫黄、灰そして鉄粉を混ぜたものが入っています。硝石、硫黄、灰(炭素)が混ぜられたものは黒色火薬として市販されていますが、それをそのままは使わず、例えば硝石多め、灰少なめなどといった具合でグループや地域差を出しています。さらに、終盤ほど火勢を上げるため底に近づくほど灰(炭素分)を少なくしています。

火薬は噴出部分から(つまり反対側から)詰めていきます。

基本的には硝石の割合を増やすと勢いは上がりますが、増やし過ぎると思わぬ暴発の懸念があるため、バランスが重要のようです。

また、火薬の詰め方も非常に繊細です。少しいれては木の棒でたたきながら詰めていくのですが、詰め方が固すぎても弱すぎても手筒花火の演技中に底から暴発してしまいます。そのため、長年の経験による繊細さが要求されます。

近年は竹ではなく紙筒になったことで、固め過ぎによる暴発が多くなったらしいです

ハネの部分は市販の黒色火薬が使われており、噴出部分が消費されていって、最終的に底の部分にまで到達すると黒色火薬に着火し、「ドン」と底から火花が噴出し、演技終了になります。

手筒花火は即日消費

日頃見ることのできる打ち上げ花火は冬に作って夏に打ち上げるため、数か月といったスパンで保管できます。これは、打ち上げ花火の玉は外気から完全に遮断されているためです。

しかし、手筒花火は打ち上げ花火と違い、鉄粉が火薬と混ぜられています。そのため、1日、2日と日が経つとどんどんと鉄が硝石によって酸化されてしまい、火勢が落ちてしまいます。そのため、基本的には手筒花火は作ったその日に消費、または次の日には消費されます。

手筒花火
手筒花火は演技が終わると噴出部分は燃えて広がっています

まとめ

このページでは手筒花火の魅力や構造をご紹介しました。

一般的な打ち上げ花火のように遠くの空を見上げるのではなく、手筒花火の魅力は何といっても火を抱える演者の姿、轟音、火の粉、熱気を地上で感じられることです。

手筒花火は普通の花火大会では見られませんが、皆さんも機会があれば手筒花火を生で見てみてください。

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